こんにちは、山下 章です。
突然ですが、仕事の空き時間に、ちょっとだけ自社Webサイト用の原稿を書いてみることにしました。
なぜ急に原稿を書こうと思い立ったのか。
それは、ここしばらくメチャクチャ楽しませてもらっているソフトがいまひとつ売り上げが伸び悩んでいると聞き、そのおもしろさを少しでも多くの人に伝えたかったからです。
そのソフトとは、ニンテンドー3DS用『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』――略して『鬼トレ』です。
そもそも『鬼トレ』を買ったのは、任天堂がはじめて新作ソフトのパッケージ版とダウンロード版を併売するというので、そのダウンロード版の使い勝手を試してみたいといった動機からでした。
ちょっとだけ遊べばそれでいいや……そんな軽い気持ちで手に入れたに過ぎず、正直言ってソフト自体にはそこまで強い興味は持っていなかったように思います。
ところが、実際にプレイしてみると――ハマりました。それこそ、どっぷりと。
『鬼トレ』には数多くのトレーニングが収録されているのですが、代表的なものに『鬼計算』があります。
テレビCMでも流れているので、ご存じのかたも多いのではないでしょうか。
ルールを簡単に説明すると、たとえば「3バック」というモードでは、画面に「2+3=」「7-4=」「5+4=」と式がひとつずつ順番に表示されたところからゲームがスタートします。
ゲームがはじまると同時に、画面には「1-0=」とつぎの式が表示されるのですが、そのときに書くべき正解の答えは「5」。
「3バック」ということで、3つ前の計算式の答え――ここでは「2+3=」の答えである「5」を書けばいいわけです。
そして、そのあとは「3」「9」「1」……と3つ前の式の答えを書きつづけ、「3バック」であれば計26問を終えたところでゲームが終了。
『鬼計算』は「1バック」からはじまり、正解率が85%を超えれば「速い1バック」へ、「速い1バック」で正解率が85%を超えれば「ゆっくり2バック」へ、といった具合に、そのあとも「2バック」→「速い2バック」→「3バック」→「速い3バック」→……と、どんどん難しいモードにステップアップしていきます。
逆に、正解率が65%以下の場合は、「3バック」だったら「速い2バック」へ、「速い2バック」だったら「2バック」へと、ひとつ前のモードに強制的にもどされてしまいます。
1日に5分間、このルールで計算をくり返して、どれだけ先の「○バック」へ進めるかに挑むのが、『鬼計算』というトレーニングなのです。
ちなみに、その日の最終成績から、翌日はスタートすることになります。
順調に進めば、毎日少しずつ成績が良くなっていくはずですが、物事がそう簡単に進むはずもなく……。
僕の場合、「速い3バック」までは、とくに引っかかることもなく進めました。
頭の中に記憶した数字を、少しずつ遅らせて出力していく感覚……とでも言いましょうか。
しかし、「4バック」になったところで、数日間、あまりの難しさに途方に暮れました。
これは自分にはクリアできないゲームなのでは?――正解率が65%以下になって「速い3バック」にもどされるのを何度かくり返したときには、心底そう思いました。
いま振り返ってみても、『鬼トレ』で遊ぶこと自体をやめるかどうかの瀬戸際にいたような気がします。
そんな状況からの突破口を開いたのは、数字の覚えかたを変えるという試みでした。
それまでは、「速い3バック」までのときと同様に、表示される計算式の答えをただやみくもに覚えて、なんとか頭の中から順番に答えをひねり出せないかとチャレンジしていました。
そのやりかたを変えて、「4バック」だから数字を4つずつセットで覚えてみることにしたのです。
すでに『鬼トレ』をやりこんでいる人には釈迦に説法かもしれませんが、ここでは未プレイの人のために、具体例を挙げて説明しましょう。
ゲームがはじまる前に表示された式の答えが、順番に「4」「1」「8」「5」だったとします。
ゲームスタート後、たとえば「7+2=」「1+2=」「2-0=」「3+3=」と順に式が表示されるときに、先ほどの「4」「1」「8」「5」を書いていくわけですが、このときに「4」「1」「8」「5」と書きながらも、現在表示されている式の答えである「9」「3」「2」「6」をひとつのセットとして覚えていくようにするのです。
で、「4」「1」「8」「5」を書き終わったら、今度は「9」「3」「2」「6」と書きつつ、そのときに表示されている式の答えを4つセットで覚えていくようにする……と、これをくり返すことで僕は、大きな壁だった「4バック」を突破できました。
なんだかとても難しい作業をしているように感じた人もいるかもしれませんが、そうした人には、ちょっと試してほしいことがあります。
「4」「1」「8」「5」と1秒おきに数字をひとつずつ声に出して言いながら、頭の中では同じタイミングで「9」「3」「2」「6」と数字をひとつずつ思い浮かべてみてください。
「4」と言いながら「9」を、「1」と言いながら「3」を思い浮かべる――そんなに難しいことではありませんよね。
『鬼計算』は、これの発展形と言っていいでしょう。
「4」「1」「8」「5」と言いながら「9」「3」「2」「6」を思い浮かべられるようになったら、今度は「9」「3」「2」「6」と声に出して言いながら、別の4つの数字を頭の中に思い浮かべる――この作業を切れ目なくスムーズにくり返せるようになれば、「4バック」をクリアできるようになっているはずです。
「4バック」(あるいは「3バック」)を突破できなくて悩んでいる人は、ぜひ試してみてください。
僕が『鬼トレ』にどっぷりとハマったのは、上記の「4バック」をはじめてクリアしたときのような、いままで自分が越えられなかった壁を越えたときに、とてつもない快感を覚えたからでした。
それは、テレビゲームが持つおもしろさの本質である「ノルマをクリアしたときの達成感」を、極めてシンプルに突きつめたものと言っていいかもしれません。
『鬼トレ』のトレーニングのひとつに『鬼記号』というものがあります。
基本的なルールは、前述の『鬼計算』と似ていますが、最大のちがいは画面に表示されるのが計算式ではなく、全50種類あるさまざま形の記号のどれかひとつだということ。
たとえば「4バック」であれば、4つ前に表示された記号がどれだったかを、下の画面に表示された3つの選択肢の中から選ぶ、という形でトレーニングは進んでいきます。
はっきり言って、これは『鬼計算』以上に「できるわけがない」と思いました。
数字であればまだ記憶できるものの、いくつもの形を連続的に覚えつづけるなどというのは、人間の脳の限界を超えているだろうと感じたのです。
だから、「3バック」をどうにもクリアできなかったときには、しばらくの期間、このトレーニングをするのをやめてしまいました。
しかし、『鬼トレ』には「グレード」という総合評価を表すものがあって、これは『鬼トレ』モード内にある8種類のトレーニングの合計成績で決まります。
最初のグレードはFで、以降、E→D→C→B→A→AA→AAA→S→SS→SSSと上がっていくのですが、プレイしていると、どうしてもこのグレードを上げたくなってくるわけです。
そのためには、『鬼記号』をいつまでもやらないまま放置しておくわけにはいかず、ある日から「たとえどんなにクリアできなくても、休まずに毎日『鬼記号』をやる」というルールを自分自身に課しました。
そして数日間つづけていったのですが……すると、あら不思議、あんなに無理だと思っていた『鬼記号』の成績が、「速い3バック」→「4バック」と、少しずつ伸びはじめたのです。
さらに、それぞれの記号をできるだけ短い言葉に置きかえて覚える工夫をしてみると、成績はますます順調に上昇をつづけました。
この原稿を書いている時点で、僕の『鬼記号』の記録は「速い14バック」。
「3バック」をクリアできなかったあのころの自分からは、想像もつかないような領域です。
「3バック」から「速い14バック」に上がるまでのあいだ、計23回も記録更新の場面があったわけですが、そのたびに「よっしゃー!」とガッツポーズを作る自分がいました。
RPGでキャラクターがレベルアップするのもうれしいですが、自分自身がレベルアップしたことが如実にわかるこの『鬼トレ』の達成感は、筆舌に尽くしがたいものがあります。
今回、この原稿を書いているのは、『鬼トレ』で得られるこうした快感を、まだ体験していない人にぜひとも味わってもらいたいからにほかなりません。
『鬼トレ』をプレイするのに踏ん切りがつかない人は、おそらく「難しそうだから」と感じて躊躇しているのではないかと思います。
そのとおりです。
『鬼トレ』は、決して簡単なトレーニングではありません。
しかし、ひとつアドバイスさせていただくなら、ツラくてもつづけること――これに尽きます。
あくまでも個人的な感覚ですが、人間の脳というのは不思議なもので、与えられた課題に対応するように少しずつ能力が上がっていくような気がします。
それこそが川島教授が言うところの「ワーキングメモリーが鍛えられていく」ということなのでしょう。
何日も乗り越えられなかった壁を突破できたときには、大げさでも何でもなく、その日1日がハッピーに思えるくらいの大きな喜びを感じられるにちがいありません。
また、ある程度成績が上がってから、最初のころに苦戦したレベルに再挑戦してみると、じつにスムーズにクリアできて、自分の成長ぶりを実感させられることと思います。
くり返し得られる達成感と、自分の成長に対して感じられる満足感――このあたり、『鬼トレ』は脳のトレーニングをテーマにしながらも、ゲームらしい要素をじつにうまく採り入れて作られているな、と唸らされます。
参考までに、僕は大学は文系で、年齢も今年で48歳になりました(気持ち的にはまだ30代のつもりですが・笑)。
そんな僕でも、グレードの上限であるSSSに到達できています。
ですから、「年齢的に無理」とか「理系じゃないから」とか考えずに、ぜひとも挑戦してみていただきたいのです。
ちなみに、グレードがSSSになっても、まだまだ遊べるのが『鬼トレ』のいいところ。
入手可能な賞状(いわゆる「トロフィー」や「実績」のようなもの)もすべて手に入れましたが、それでもいまなお、各トレーニングでの成績をさらに上げるべく、帰宅してから毎日数種類ずつ挑戦をつづけています。
また、8種類の『鬼トレ』のトレーニング以外にも、9種類の『鬼トレ補助』、9種類の『脳トレ』、3種類の『リラックス』、さらには全力で集中できる時間に挑む『集中時間測定』といったバラエティに富んだトレーニングも収録されていて、これらもやりごたえ十分。
なかでも、懐かしのファミコン版『スパルタンX』風味の数字破壊ゲーム『加算格闘』や、デュアルファイターで漢字を撃破していく『漢字宇宙』あたりには、ゲームファンならばニヤリとさせられることでしょう。
くわしくは、任天堂の公式サイトで全種類動画付きで紹介されていますので、興味のあるかたはぜひご覧ください。
最後に、もっとすぐれた成績の人はもちろんいらっしゃるとは思いますが、『鬼トレ』に挑んでいるみなさんに参考にしていただけるよう、48歳・文系の僕の2012年10月29日時点での記録を掲載しておきます。
ちょっと補足しておくと、『鬼計算』をプレイしていると、川島教授が「『鬼トレ』ではいろいろなテクニックを見つけてどんどん使ってください」と言います(とはいえ、紙に書いたり他人の協力を得たりするのはもちろんNGですよ)。
こういったあたりもゲーム的な要素を採り入れた部分だと思うのですが、その言葉を聞いてゲーマーの血が騒いでしまった僕は、いくつかのトレーニングにおいて、自分の本来の能力以上の結果を攻略テクニックによって生み出しています。
しばらく前までは「公認されている以上、それも含めての『鬼トレ』」と考えてハイスコア・チャレンジ的に遊んでいたものの、最近は前述の『鬼記号』のように、テクニックを何も使わずに記録を出したほうが楽しく感じられてきました。
『鬼トレ』は4人ぶんのプレイヤー登録ができるので、近々、別のプレイヤー名を登録して、あらゆるテクニックを封印したプレイというのも楽しんでみるつもりです。
そんなこんなで、かなり長い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
別に、任天堂から依頼されてこの原稿を書いたわけではありません(笑)。
また、自社のWebサイト用の原稿なので、原稿料がもらえるわけでもありません(苦笑)。
ひとえに『鬼トレ』への愛が、これだけの文字を書き連ねさせたと思っていただければ、と。
この原稿を読んで、『鬼トレ』の世界に足を踏み入れてくださる人がいたら、とてもうれしいです。
すれちがい通信で、「あっきー」が「鬼トレ仲間」に加わったときには、ぜひ仲良くしてやってくださいね!
前回の記事から1ヵ月ちょっと経過した、2012年12月6日時点での記録も掲載しておきます。
ご参考まで。