週刊誌の場合は1週間単位、月刊誌の場合は1ヵ月単位で、ひとつの仕事が終わり、すぐにつぎの仕事がはじまります。ところが、攻略本の場合は、そうした決まったサイクルというのが存在しません。
攻略本には、大きく分けて、同発攻略本(ソフトと同時に発売される本)、中期型攻略本(とりあえずエンディング近くまで行けるように手ほどきする本)、後期型攻略本(こまかいデータや隠し情報が網羅された本。アルティマニアはこれにあたります)という3タイプがあります。そのどれを作るかによって、スケジュールは大きく変わることになり、年末や年度末などのソフトのラッシュ時期には、複数の本の仕事が入り乱れて、大変な状況を迎えることも珍しくありません。
ベントスタッフが作る本は、アルティマニアや解体真書に代表されるように、そのほとんどが後期型攻略本です。これは、せっかく作るなら、とことんまでそのゲームについて掘り下げたい、という僕やスタッフの考えによるところが大きかったりします。
後期型攻略本ならば、制作期間が長いからラクなのでは?と思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな誤解だと言っておきましょう。近年のRPGはどれもすさまじいボリュームとなっており、何から何まで掲載しようとすると、ソフトが手元に届いてから2ヵ月ちょっとという制作期間では、足りないと思うことはあっても十分と感じることはありません。とくに500~600ページの厚さを宿命づけられているアルティマニアでは、その作業の過酷さは想像を絶するほどです。
アルティマニアの制作作業は、マラソンのようなものだ、と僕は考えます。スタートしたとき、ゴールはかなり先にあるのでゆっくり走りたくなってしまうけれど、そこでラクをしたツケは、かならずあとにまわってくる。また、途中で立ち止まったり、必要以上に水を飲みすぎると、時間内の完走が困難になってくる。アルティマニアは42.195kmを脇目も振らずに全力で駆け抜けて、あとから「あそこで本気を出しておけば」と後悔しない本にしたい――そうした思いが、つねに僕のなかにはあります。実際には、どのアルティマニアにも何らかの反省点はあるものの、それを次回への課題として、少しずつシリーズをステップアップさせてきたつもりです。
今回の「FFX-2 アルティマニア」は、過去のシリーズで最厚だった「FFX アルティマニアオメガ」の640ページを大きく上まわる736ページに決定。それを通常の制作期間で満足のいく形に仕上げるのは、ある意味、世界最高記録の走りに挑戦するようなものですが、スタッフ一同、まさしく日々の生活を捧げて制作に没頭しています。どうぞみなさん、ご期待ください。