……当然ながら、最初の狙いどおりにすんなりいけるわけがない。いくつもの障害にぶつかり、何度も作戦を調整する必要に迫られた。
とは言っても、作戦のベースとなる部分は変えようがない。基本的には1発食らったら終了なので、悪くても1ターンおきに、できれば毎ターン『オーヴァドライヴ』を使うことは絶対に必要で、変更できる余地があまりないのだ。
そんななかで、とくに目立つ調整が入ったのは「装備」「恩寵値」「第2形態の1ターン目の突破方法」「柱を復活させるターンの対処法」の4点。それらの詳細を、順に解説していこう。
まず、装備の変更。最初にいじったのは指輪部位だ。
ウィザードリングを装備しているのは、知力を上げて『ウォーターガン』のダメージを高めるため。しかし、攻撃の主力は『かすみ二段』。『ウォーターガン』を使う機会は、どちらかというと少なめだ。挑戦をくり返すうちに、知力を上げて『ウォーターガン』を強化するより、腕力を上げて『かすみ二段』を強化するほうが有利ではないか? と考えるようになった。
というわけで、知力+10のウィザードリングを、腕力+3のポケットドラゴンに変更。差は微妙だが、『ウォーターガン』のダメージが下がるかわりに『かすみ二段』のダメージが上がった。
■与えるダメージ量の変化
そうなってくると欲が出る。『かすみ二段』をさらに強くするために、腕力をもっと上げたくなった。
思い立ったら即実行。試しに怪力手袋を装備してみた。これで腕力+10。『かすみ二段』のダメージがさらに上がる。
問題は、怪力手袋の装備部位が手であること。これを装備するとなると、耐火防御補正+50の耐熱手袋をあきらめなければならない。それだけならまだしも、怪力手袋には-10の耐火防御補正がある。つまり、手の装備を耐熱手袋から怪力手袋に変えると、耐火防御が60も下がってしまうのだ。
一応、先ほど装備することに決めたポケットドラゴンは、耐火防御補正+20。これも含めると、最初の装備とくらべて耐火防御が下がる量は40だ。はたして、これでサルーインの火術に耐えられるだろうか?
やってみたところ……ダメだった。『ヘルファイア』で40ものダメージを食らって、一撃で倒されてしまう。
そこで、今度は翼のお守りをあきらめて、アンバーマリーチを装備する。これで耐火防御を10上げ、サルーインの火術に耐えられるかどうかやってみたところ……『ヘルファイア』で6のダメージを受けた。
ダメージ6……微妙な数字だ。ふつうのプレイならノーダメージと同義だろうが、今回のプレイでは、アイシャの最大HPの20%に達する大ダメージであり、無視できない影響がある。
1回のバトルのあいだに『ヘルファイア』を受ける機会は、そう何度もない。毎回6のダメージを受けたとしても、『ヘルファイア』だけで倒されることはまずないだろう。しかし、問題は『火の鳥』。第2形態との戦いでは、『火の鳥』の可能性があるAのターンを14回以上通過しなければならない。もし、ここでわずかでもダメージを受けるようなら、倒される危険性はかなり大きくなる。
サルーインの場合、なぜか『ヘルファイア』のほうが『火の鳥』よりも威力が高いので、もしかしたら『火の鳥』ではダメージを受けずにすむかもしれない。しかし、試してみるだけでもかなりの大仕事(第1形態は、そう簡単には突破できない)。ちょっと実験する気が起こらないし、実験抜きで冒険するのも怖すぎる。翼のお守りの素早さ+3を得られないのも、密かに痛い。
というわけで、残念ではあったが、怪力手袋の導入は断念した。装備の変更は「ウィザードリング→ポケットドラゴン」にとどめておく。
あともうひとつ。これはかなり後期に行なった変更だが、武器欄の順番を入れかえ、水竜剣を4番目にしておいた。べつに、威力が変わるとかそういうことはないのだが、このほうが、水竜剣と水術でコマンドを切りかえるときにボタンを押す回数が少なくてすむので、操作がラクになるのだ。ものぐさでスミマセン。
つぎに大きな変更をほどこしたのは恩寵値。最初に考えていた作戦では、神の恩寵はBP回復のミルザ一択で、「ほかの神の恩寵は必要なし、むしろミルザを阻害するぶん邪魔」とまで考えていた。
しかし、何度も何度も何度も何度も戦いつづけるうちに、その考えに疑問を感じはじめたのだ。
前述のとおり、技術強化の妙薬(あるいは単発での『奇蹟の水』)を使ったターンにミルザの恩寵が発動しても、何の役にも立たない。貴重な神の恩寵がせっかく発動したのにムダになってしまうのは、あまりにももったいない。
そこで、メインで狙う恩寵をミルザからエロールに変更することにした。
エロールの恩寵でLPが回復すれば、単発で『オーヴァドライヴ』を使うターンの行動を「『かすみ二段』×4→『オーヴァドライヴ』」に変更できる。回復したLPを温存しておき、フィニッシュで『変幻自在』を連発するのもアリだろう。
ミルザの恩寵が発動した場合、「『オーヴァドライヴ』→『オーヴァドライヴ』→『オーヴァドライヴ』→『かすみ二段』×5」が増えるのに対し、エロールの恩寵が発動した場合に増えるのは「『かすみ二段』×4→『オーヴァドライヴ』」。恩寵1回分のダメージ増加量は、ミルザのほうがエロールよりも『かすみ二段』1回分多い。しかし、「『オーヴァドライヴ』→『オーヴァドライヴ』→『オーヴァドライヴ』→『かすみ二段』×5」を増やすと、通過しなければならないAのターンも1回増え、『ダークネビュラ』を受ける可能性が高まる。一方、単発の『オーヴァドライヴ』が「『かすみ二段』×4→『オーヴァドライヴ』」に変わるだけなら、その危険を冒さずにすむ。
そして、なんと言ってもエロールなら恩寵のムダ撃ちがない。エロールの恩寵が発動するのはLPが大幅に減っているときだけなので、BPが満タンでも平気で出てくるミルザより信頼性は上だ。おまけに、エロールは神殿で買える術が高価&恩寵値上昇イベントも多いおかげで、ミルザよりも恩寵値を高くしておける(=恩寵の発動率を高められる)。これだけ好材料がそろっていれば、恩寵のメインはエロールでキマリだろう。
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というわけで、前のプレイデータからやり直してエロールの恩寵値を上げにかかる。エロールの恩寵値はおそらくゼロになってしまっているので、まず神殿で『サンライトアロー』を1個だけ買い、恩寵値を1にしてからガレサステップでバトル。「みね打ち→影縫い→みね打ち→影縫い→みね打ち」の5連携で天輪陣を出しまくる。「天輪陣50回→バトル終了」を16回くり返し(ここまでで恩寵値は推定948)、以降は「天輪陣1回→バトル終了」を52回やって、エロールの恩寵値を推定1000まで上げた。
……と、書くだけなら簡単だが、これがまた大変だった。ミルザの恩寵値を上げたときは『幻夢結界』が使えるおかげで聖獣陣をラクに出せたのだが、天輪陣は5連携なので『幻夢結界』に頼れない。仲間のスキルレベルを5まで上げ、さらに『影縫い』の担当者に帝国海兵を名乗らせるなど、連携の確率を上げるためにいろいろと小細工をしたが、それでも効率はイマイチで、恩寵値を目標の推定1000まで上げるのに丸々3日かかってしまった。3日間、天輪陣以外何もやっていない……。
陣による恩寵値上げが終わったら、例によって神殿への献金とイベントで、エロールとミルザの恩寵値を上げる(ミルザの恩寵も、まったく利用しなくなるわけではない。あくまで「主力をエロールにする」というのがこの変更の狙い)。これにより、恩寵値はエロールが2052、ミルザが894となっていたはずだ。
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恩寵値の変更に伴って、作戦にも大きな変更を加える。具体的には、『スターライトビット』の使用をやめた。
すでに述べてきたとおり、『スターライトビット』を使う場合は、2ターン目にミルザの恩寵の発動が必須。しかし、恩寵値がわずか894では、神の恩寵の発動確率は35.76%しかない。発動しなかったら失敗なのに、これでは確率が低すぎる。
『スターライトビット』を使わない作戦でも、ミルザの恩寵が不要なわけではない。しかし、その場合は『オーヴァドライヴ』がBP不足で使用不能になる前に発動してくれればいいので、「2ターン目に必須」ではなくなる。2、4、6ターン目のいずれかで発動すればOKで、そうなる確率は約73.5%。「ミルザの恩寵値が1894の場合に2ターン目で発動する確率(75.76%)」と大きな差はない。しかも、それらのターンでミルザの恩寵が発動しなくても失敗確定ではなく、サルーインに攻撃される可能性のあるターンが1回増えはするものの、まだ勝てる可能性が残るのだ。
魔法盾を張らないとなると、第1形態の攻撃への対処法は「アイシャが先に行動する」「『ヘルファイア』『ウォーターガン』『ロッククラッシュ』のいずれかを受ける」のどちらかしかなくなる。しかし、実際に戦ってみたところ、アイシャが先に行動する確率はそれほど低くない。実プレイでの統計では、3690回中2122回、約57.5%はアイシャが先に行動できた。
さらに、『スターライトビット』を使う作戦では、サルーインに攻撃される可能性があるターンは5回のつもりでいたのだが、『かすみ二段』で敵に与えるダメージ量が実戦前の予想よりもやや小さく、実際は6回だった。『スターライトビット』を使わない戦法なら本当に5回ですむので、危険なターンを1回減らすことができる。おまけに、魔法盾を張ったとしても、サルーインに攻撃される可能性があるターン6回のうち、最後の2回は持続時間が過ぎて魔法盾が消えてしまっているので、結局そこはスピード勝負に賭けるしかない状態だった。
そんなわけで、『スターライトビット』をやめたからといって、勝率が大きく下がるわけではない。恩寵の発動確率の都合で、使わないほうがむしろ有利、と判断した。
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つぎの変更点は、サルーインが第2形態に変わった直後の対処法。
ここまでのところは、あえて説明せずに進んできたが……じつは、本攻略における最大の難関は、第2形態の1ターン目なのだ。
当たり前の話だが、第1形態にトドメを刺すと、サルーインは即座に第2形態に移行する。第1形態を倒したあと、『オーヴァドライヴ』を使って敵の動きを止めることはできない。
よって、第2形態は最初のターンで自由に行動できる。このときに、『ゴッドハンド』はもちろん、防げない術を1回使われただけで即終了となってしまう。
計画を立てた当初は、「第2形態の1ターン目がAのターンならべつに問題ないよね」とか思っていたのだが……実際に戦ってみたら、何回やってもAのターンは第2形態の2ターン目だった。さあ大変だ。1ターン目をどうやって切り抜けよう……。
「まあ、6割近くはアイシャのほうが速いんだから、先に『オーヴァドライヴ』を使えば問題ないよね」とも思ったのだが、これもアマかった。サルーイン完全体は、第1形態から第2形態に移行するさい、おそらく素早さが激増している。
そう考える根拠はふたつ。まずひとつ目は純粋なスピードの問題で、第2形態は異常なまでに速い。前述のとおり、第1形態に対してはかなりの確率でアイシャが先攻できるが、第2形態よりも先に行動できることはほとんどない。実際のプレイの統計では、第2形態に対してアイシャが先に行動できたのは388回中わずか11回、約2.8%にすぎなかった。
これだけなら、第2形態にはものすごい速度値ボーナスがかかっている(あるいはこっちの速度値にペナルティがかかっている)とも考えられるが、もうひとつ、技の命中率にもちがいがある。第1形態に対して使った『かすみ二段』がミスになったことは一度もないが、第2形態に使うとちょくちょくミスになる。ミスの確率は「攻撃側の器用さ」と「防御側の素早さ」に影響されるから、やはり第2形態の素早さが上がっている、と考えるほうが自然だろう。
まあ、理由はどうであれ、第2形態に対してアイシャが先攻するのは絶望的だ、と思ってもらえればいい。要するに、アイシャが先に行動するのを祈るだけでは、全然対策になっていないということだ。
ここは本当にいろいろな打開策を考えた。思いついた手を順に紹介していこう。
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デスとのバトルでは、エレメンタルをいけにえに捧げることで、一撃必殺の『開門』に対処した。それと同じように、第2形態の最初の攻撃に対して、何らかの召喚キャラクターを身代わりに立てればいいのではないか?
考えついた瞬間は「これしかない!」と思ったのだが、もうちょっと検討してみると、全然ダメだった。
まず、第2形態の1ターン目の攻撃を受けさせたいわけだから、第2形態突入時……つまり第1形態にトドメを刺すときは、すでに召喚キャラクターと交代しておく必要がある。ということは、召喚キャラクターの攻撃によって第1形態にトドメを刺さねばならないのだ。
もう、この時点でかなり絶望的。召喚キャラクターがサルーインの攻撃に長々耐えられるはずはないので、召喚する前にアイシャの攻撃でサルーインのHPをギリギリまでケズっておく必要があるのだが……そんなデリケートな調整はまず不可能。『かすみ二段』を単発で使うだけでも、乱数によるダメージ量の幅が300以上もあるうえ、加撃の発動、連携の成否、『変幻自在』の閃きなど、不確定要素が多すぎて、ダメージ量の調整はどんぶり勘定が精一杯なのだ。
ならば、どんぶり勘定でもいけるように、幻体戦士に『オーヴァドライヴ』を使わせて5回攻撃だ! ……と思ったのだが、これもダメ。幻体戦士は召喚者とほぼ同じ能力を持つが、術合成の効果は受けられない。幻体戦士といえども、『オーヴァドライヴ』は使用不能だ。
というわけで、召喚を使うアイデアはあえなくボツとなった。
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もし、第2形態の最初のターンに魔法盾が残っていれば、それによる回避に賭けることができる。第1形態を倒す少し前に『スターライトビット』を使えば、第2形態の最初の攻撃を乗り切れる確率は上がるはずだ。
……しかし、BPのやりくりが難しい。これをやろうとすると、第1形態戦がかなり厳しくなってしまう。しかも、サルーイン完全体は1ターンに3回も4回も攻撃してくるので、そのすべてを弾かなければ生き残れない。魔法盾があっても、かなり焼け石に水だ。
ついでに言うと、サルーインが術で攻撃してきてくれれば魔法盾で回避可能だが、魔法盾を無視する『ゴッドハンド』を使われたらどうしようもない。第1形態の突破率を下げてまで魔法盾を使う価値はなさそうだ……。
では、魔法盾は魔法盾でも、回避用ではない魔法盾、『リヴァイヴァ』を使えばどうだろうか? これなら、倒されたときに100%発動するので、回避率の心配はしなくてすむ。危険があるとしたら、『ゴッドハンド』や『アビス』の即死効果くらいだ。
これは一見良さそうに思えたのだが……『リヴァイヴァ』を使うのは根本的に不可能。水術である『オーヴァドライヴ』を、術具なしでも使えるようにしておかなければならないので、対立術である火術は封印されてしまう。炎のロッドなどの術具を装備すれば火術も使えるが、そのためには、現在装備している水竜剣、聖杯、技術強化の妙薬×2のうち、いずれかをはずす必要がある。しかし、今回の攻略ではどれも絶対にはずせないアイテムで、火の術具に場所をゆずるわけにはいかない。
というわけで、『リヴァイヴァ』は使用不能。この作戦もボツとなった。
素早さ勝負でかなわないのなら、サルーインの素早さを下げるか、アイシャの素早さを上げればいいはず。素早さを上下させて先攻を狙ってみるのはどうだろうか。
敵の素早さを下げる効果を持つ技は、『かかと切り』と『逆風の太刀』のふたつ。『逆風の太刀』はBPコストが多すぎるので、使うとしたら『かかと切り』しかあるまい。
しかし、その『かかと切り』も、BPコストをゼロまで下げることはできない。BPコストなしで使える『かすみ二段』とくらべると、使いやすさに雲泥の差がある。しかも『かすみ二段』とちがい、『かかと切り』はディフレクトで弾かれる可能性があるのも怖い。
さらに、それ以前の問題として、『かかと切り』を使うには曲刀、片手斧、両手斧のいずれかが必要。ついさっき述べたとおり、武器は変更できる余地がない。よって、『かかと切り』は自動的にボツとなる。
では、アイシャの素早さを上げるほうはどうだろうか?
素早さを上げるアイテムには、素早さの薬というものがある。ポーションタイプのアイテムは『オーヴァドライヴ』の効果中なら5回使用可能。これで一気に素早さを上げれば、あるいはいけるかもしれない。
……という気もしたのだが、バトル中に能力値を増減させる効果はターン終了ごとに薄れていき、数ターンで完全に消えてしまう。「素早さの薬を使ってターン終了→『オーヴァドライヴ』を使ってターン終了→第1形態にトドメを刺してターン終了」と、3回もターン終了がはさまるのでは、すばやく行動したい場面ではすでに素早さがもどり切っている可能性が高い……。
というか、素早さの薬を装備しなきゃいけない時点でボツだった。武器を変えられないというのは、縛りとしてかなり厳しい……。
速度値は素早さだけで決まるわけではなく、さまざまな要素によってボーナスがつく。素早さでかなわなくても、何らかの方法で大きなボーナスを受ければ、先攻を狙えるはずだ。
ここで利用できるのは、武器と隊列による速度効果。術をふつうに使うと速度効果はゼロだが、術具を通して使えば速度効果を得られる。そこで、第2形態開始直後の『オーヴァドライヴ』を、水竜剣で使ってみることにした。
『かすみ二段』と併用するわけでもないのに水竜剣で『オーヴァドライヴ』を使ったら、LPをソンするだけ。ふつうなら何の意味もない行動だが、これで第2形態の素早さに対抗できるなら、やってみてソンはない。
さっそく試してみたところ、いきなり第2形態よりも先に行動成功! 「これはすばらしい作戦だ!」と思ったのだが……そのあとの11回のチャレンジではことごとくサルーインが先。どうやらただ単に、まったくたまたま先攻できただけらしい。
これでは、LPを3も支払う価値があるとは思えない。この作戦もボツと消えた。
……というわけで、何をやってもダメだった。サルーインの複数回攻撃すべてが『ヘルファイア』『ウォーターガン』『ロッククラッシュ』のいずれかになるか、幸運にもアイシャが先に行動できれば、第2形態の1ターン目を突破できるが……うまくいく確率があまりにも低すぎる。いくら何でも、このまま挑戦をつづけるのは無謀だろう。
そもそも、ここで詰まったのは、第2形態の1ターン目がAのターンではなかったせいだ。第2形態の1ターン目がAのターンでさえあれば、何も問題はなかったのに。
……ならば、第2形態の1ターン目をAのターンに変えてしまえばいいのではないか?
しかし、第2形態の行動の候補がどこからはじまるのか、その決まりかたが全然わからない。以前は「第1形態との戦いかたが影響しているのではないか」と思っていたが、第1形態戦でどう小細工をしても、第2形態の1ターン目の候補は変わらなかった。
やはり無理なのか……。
……とも思ったのだが、冷静に考えてみると、じつはすでに大きなヒントをにぎっていることに気がついた。
前述のとおり、最初のころの挑戦ではミルザの恩寵だけを狙っていたが、途中で作戦を変更し、恩寵をエロール主体に変えている。当然、このときは少し前のデータからやり直し、恩寵値を上げ直したうえで、ラストダンジョンに再突入した。
これを境に、第2形態の行動に変化が起こったのだ。
ミルザの恩寵狙いで戦っていたころは、何回やっても、第2形態になってから2ターン目がAのターンだった。ところが、狙う恩寵をエロール主体に切りかえたあとは、Aのターンが3ターン目に変わっていたのだ。そして、それ以降は、何回やっても3ターン目のままだった。
ということは、第2形態の行動を制御しているのは、「恩寵値を上げ直しているあいだに変わった何か」であると考えられる。それが何であるかがわかれば、第2形態のAのターンがいつになるかを操作することが可能なはずだ。
やり直す前とあととで、とくに大きく変わったのは「プレイ時間」「バトル回数」「恩寵値」の3つ。これらが変わったときに第2形態の行動に変化が起きるかどうか、調べてみた。
まずはプレイ時間。プレイデータをロード後、しばらく放置したあとクイックセーブし直し、プレイ時間をズラして戦ってみた。変化がなければ経過させる時間を延ばし、同じ手順をくり返す。
結果。約1分→約2分→約5分→約10分→約20分→約30分→約1時間と経過(いずれも累計)させたが、第2形態の行動は変化しなかった。たまたま同じになっただけという可能性もなくはないが、7通りやってひとつも変わらなかったのだから、そのセンは薄い。おそらく、第2形態の行動にプレイ時間は関係ないだろう。
つぎに、バトル回数を変えてみる。まずは実験として、ラストダンジョンの外でセーブしたプレイデータをロード。どこかでバトルを行なったらラストダンジョンにもぐり、クイックセーブしてサルーインと戦ってみた。
結果。地上でのバトルを1回やっただけでは第2形態の1ターン目はAにならなかったが……地上でのバトルを2回行なったら、1ターン目がAに変わった!!
第2形態の行動は4ターン周期が基本。いままで「3ターン目がA」だったものが、バトル回数2回の変化で「1ターン目がA」になったわけだから……バトル1回につき、第2形態の行動が1ターンずつズレる公算が高い。あるいは、バトルを1回やるたびにランダムで変わるとか、バトル回数ではなくランクポイントで制御されている可能性もある。
詳細は不明だが、とにかくバトルを行なうことで第2形態の行動パターンをズラせるのはまちがいない。今度は本番用に、神殿で術を買う前のプレイデータからやり直す。バトルを2回やったあと、術の購入とイベントによる恩寵値上げを行ない、ラストダンジョンに再突入してサルーインと戦うと……やはり、第2形態の1ターン目がAになっていた。
かくして、第2形態の初手をAのターンにすることに成功。これにより、 第2形態の1ターン目を突破する確率が飛躍的に上昇した。第2形態の1ターン目を抜けられるのは、これまでは丸1日戦いつづけてたったの2回とかだったが、1時間のあいだに2~3回は抜けられるようになった。あとから数え直してみたところ、第2形態の1ターン目を突破した回数は、1ターン目がA以外の場合は69回中10回(約14.5%)、1ターン目がAの場合は60回中53回(約88.3%)だった。圧倒的じゃないか、Aのターンは……。
最後の変更は、柱が復活するターンでのアイシャの動きかた。前述のとおり、サルーインが柱を復活させるときは、『オーヴァドライヴ』で動きを封じずに、自由に行動させている。「サルーインがこのターンに2回以上行動する確率は低い」と考えていたからだ。
……ところが、意外とそうでもない。今回のプレイでは24回中14回、約58%は、柱の復活ターンでもサルーインは複数回の行動をした。せっかく第2形態の1ターン目を高確率で抜けられるようになったのに、今度は柱の復活ターンに2回以上行動されて倒されるケースが目立ちはじめる。
また、サルーインが柱を復活させた直後にアイシャが『オーヴァドライヴ』を使った場合、そのつぎの『オーヴァドライヴ』の切れ目のターンがAではなくなっている(当然、あっという間に倒される)ということも何度かあった。
これは、本来なら柱の復活ターンにサルーインが2回以上行動するはずだったのに、2回目の行動より前にアイシャが『オーヴァドライヴ』を使ったせいで、複数回行動かどうかがわからなかったのが原因だ。すでに述べたとおり、サルーインが柱の復活ターンに2回以上行動するときは、2ターン分の行動と見なされる。それに合わせて、『オーヴァドライヴ』を使う回数を減らさないと、『オーヴァドライヴ』の切れ目をAのターンと合わせられなくなってしまう。
柱を復活させる以外の敵の行動に術が含まれているなら、サルーインが構えをとるときに術を予告するエフェクトが出る。この場合は、たとえアイシャの行動が早くてサルーインが実際には0~1回しか行動しなくても、2回以上行動しようとしていたことはわかるので問題ない。
しかし、柱を復活させる以外の行動が『ゴッドハンド』だった場合、それを予告するエフェクトは表示されない。そのため、サルーインの行動が1回だけなのか、2回以上あるのか、判断するすべがないのだ。
実際に『ゴッドハンド』を使ってくれば、複数回行動であることは明々白々だが……その場合はターンのズレとか考えるまでもなく負け。サルーインが柱の復活ターンに『ゴッドハンド』も使う場合、かぎりなく詰みに近い状態になってしまう。
というわけで、Aのターンと柱の復活ターンが重なるときにサルーインに自由な行動を許すのは、かなり危険だということがわかってきた。このターンも『オーヴァドライヴ』でスキップしないとヤバイだろう。
しかし、それをやろうとすると、以前は
となっていたところが、
となってしまう。なんと、7ターン連続『オーヴァドライヴ』を強いられるのだ。
これを実現するには、7ターン連続使用がはじまる直前に、聖杯や技術強化の妙薬を使ってBPを回復しておくしかない。つまり、BPを回復するタイミングを強制的にズラされてしまう。BPにいくらか余裕があるうちから回復を行なわなければならず、『かすみ二段』で攻撃する機会がかなり減る。今度はダメージが足りるかどうかが心配だ。
……が、結論から言えば、一応何とかなる。BPを限界まで活用できるように『ウォーターガン』で攻撃する回数を増やし、聖杯と技術強化の妙薬の使用順序を入れかえ、エロールの恩寵に頼りまくれば、サルーイン完全体を倒せるだけのダメージにギリギリ届く。柱の復活ターンは『オーヴァドライヴ』でスキップすることに決めた。
そして、最終戦術が決まってから、挑戦すること204回。ついにサルーイン完全体の撃破に成功した。
長い道のりだった。本当に長い道のりだった。最初の作戦から数えると、挑戦回数は1460回(もちろん、通常サルーインへの挑戦とは別勘定)。途中、もうコレ不可能なんじゃないかと何回も思わされた。HP90000のサルーイン完全体に対してダメージ89300まで与え、トドメのつもりで放った『電光石火』で自分が力尽きるとか(LPが足りないことに気づかなかった! 気づいた瞬間にコマンド入力が終わってた!!)、ダメージ86000まで与え、「あと1回『ダークネビュラ』がこなければ勝てる!!」という状況でまんまと『ダークネビュラ』とか、じつにロマンシングな失敗もあったが、いまとなってはいい思い出だ。
最後に、最終的な作戦での勝率を計算しておこう。
まず、第1形態を突破するための条件は……
●2、4、6ターン目のいずれかでミルザの恩寵が発動した場合(約73.5%)、アイシャが5回連続でサルーインより先に行動すれば成功(先に行動できる確率は、1回につき約57.5%)
●2、4、6ターン目に恩寵が発動しなかった場合(約26.5%)、アイシャが6回連続でサルーインより先に行動すれば成功
●アイシャが先に行動できなくても、敵の攻撃が『ヘルファイア』『ウォーターガン』『ロッククラッシュ』のいずれかならセーフ(1ターン目は、約41%の確率で『ヘルファイア』か『ウォーターガン』がくる)
1ターン目を突破できる確率は、57.5%+(42.5%×41%)=約74.9%。2ターン目以降は、サルーインが術を使う確率が不明(かなり低いことは確か)なので、ちゃんとした計算はできないが、先攻する確率のみよりはわずかに高いはずなので、とりあえず、突破できる確率を1ターンにつき約60%と考えてみよう。
そうすると、第1形態を突破できる確率は
73.5%×(74.9%×60%×60%×60%×60%)
+26.5%×(74.9%×60%×60%×60%×60%×60%)
で、約8.6%となる。
一方、第2形態は、1ターン目にいきなり倒されるケースや、柱の復活ターンに敵が複数回行動するケースを気にしなくてよくなった。敵の攻撃で失敗する可能性があるのは、Aのターンで『ダークネビュラ』を使われた場合だけだ。最終的な戦術では、Aのターンがまわってくるのは12回。今回のプレイの統計では、Aのターンで『ダークネビュラ』を使われたのは288回中51回の約17.7%。つまり、約82.3%は『ダークネビュラ』を使われず、それが12回つづく確率は約9.66%となる。
あと、第2形態戦では、エロールの恩寵が最低でも3回は発動しないと勝てない。3回それぞれの発動確率は、1回目が82.08%、2回目が71.8%、3回目が62.8%だ。「バトル全体を通して、望みの回数だけ発動する確率」を厳密に計算するのはちょっと無理なので、単純化して考えてみる。
第2形態と戦うあいだ、エロールの恩寵が発動し得るターン(アイシャが『オーヴァドライヴ』を使わないターン)は12回。しかし、神の恩寵が1回発動すると、向こう10ターンは発動しなくなる。これは、今回の戦術の場合、「エロールの恩寵1回目、2回目それぞれの発動によって、以降の発動の機会が2回ずつ失われる」と言いかえてもいい。よって、実質的な発動の機会は8回となる。
この8回のあいだに、エロールの恩寵が上記の確率で3回以上発動する可能性は、約99%。恩寵についてはほとんど心配ないわけだ。本当は、エロールではなくミルザの恩寵が発動した場合とかも計算に入れなければいけないため、これよりも確率は落ちるが、ミルザの恩寵が発動したらしたでやりようはあるので、それは考えないことにする。
あとはダメージ効率の問題。乱数が低めに片寄りまくったり、加撃が全然出なかったり、『かすみ二段』をミスしまくったりすれば、ダメージが足りなくなる恐れもある。
とはいえ、ダメージがきっちり足りる確率まではちょっと計算できない。かなりの長丁場なので、平均に収束するものと考えて、ここでは考慮しないでおこう。
かなり乱暴な計算をした部分も多いが、以上を総合すると、
8.6%×9.66%×99%
で、勝率は約0.82%となる。
……戦う前に計算しておかなくてよかった。この確率が事前にわかっていたら、やる気がしなかったかもしれない……。